參加應用昆蟲學會
參加了第67回 日本應用動物昆蟲學大會(2023年3月13〜15日@摂南大學)。
除了展示一年的研究成果外,還和來自各地的研究者們進行了愉快的交流互動。
以下是本實驗室的發表內容概述
公共研討會「Moonshot計畫在 2050 年實現的昆蟲利用和害蟲防治目標」
「ハエ飼料化は本当に実現可能か?」霜田政美
口頭發表
「Drosophila suzukii的產卵偏好研究」阿久津純一
「使用對象檢測算法的動作標記研究」渠一村(松尾 隆嗣)
「壁面突起によるアメリカミズアブ幼虫の逃亡防止: 3Dプリンティングを用いた検証」張善在
「タバコカスミカメの高精度ゲノム解析と化学受容体の探索」柴田智文
「アメリカミズアブ飼育における連続的環境センシングシステムの開発」西岡蒼吾
「RNAiによって生じたフェモラータオオモモブトハムシの構造色変化」香月雅子ら
「ネギアザミウマの視覚認知:赤ネットはどうして防除効果が高いのか?」德嶋賀彰ら
「コーヒー抽出かすを利用したアメリカミズアブ幼虫大量飼育法の開発」藤田弥佳ら
「アミノ酸トランスポーターの阻害によるアメリカミズアブ幼虫のアミノ酸含量の増加」劉家銘ら
「紫色LEDライトを用いたヒメカメノコテントウの誘導」伊藤健司ら
「紫色LEDライトを用いたトバテンの定着増強効果」村田篤志ら
<以下為詳細介紹>
第67回 日本応用動物昆虫学会大会(令和5年3月13〜15日、摂南大学)
〇大木碩仁 ・ 霜田政美 (東大・農学生命)
世界では約13億トンの食品が毎年廃棄されており、環境負荷の少ないリサイクル技術の必要性が高まっている。近年、腐食性昆虫アメリカミズアブ Hermetia illucens を利用した処理法が廃棄物の資源循環に貢献することで注目されているが、実際には採算性の確保が容易ではないという課題を抱えている。そこで、毎月の処理量が異なる事業モデル (10t, 50t, 300t) を作成し、既存技術における処理残渣量あたりの幼虫生産量と堆肥生産量を明らかにした。また、各処理量に必要な施設面積を算出し、生産コストと想定販路に求められる価値を試算することで、ミズアブ処理事業の収益性を考察した。その結果、処理残渣量あたりの幼虫生産量はおよそ71.9 kg/t 、堆肥生産量はおよそ660kg/t 得られることが示された。さらに、生産コストの大部分を人件費が占めており、特に幼虫回収や採卵行程の自動化が進むことで大きなスケールメリットが得られると考えられた。したがって、ミズアブ処理法の生産体制にはコスト削減の余地が残されており、人手によらない自動化技術の導入によって生産規模や販路の拡大が促されると期待される。
壁面突起によるアメリカミズアブ幼虫の逃亡防止: 3Dプリンティングを用いた検証
〇張善在 ・ 霜田政美 (東大・農学生命)
アメリカミズアブHermetia illucens (以下、ミズアブ)の幼虫は優れた物質変換能力を持ち、食品残渣処理や家畜飼料生産等への利用が期待されている。しかし、ミズアブ幼虫の移動拡散は活発で、体表が濡れている時には垂直面を登壁し、飼育容器の僅かな隙間から逃亡する。そこで本研究では、ミズアブ幼虫の登壁および逃亡を抑制する表面構造物の開発を目的とした。方法として、実験① 市販のマジックテープ、テフロンテープ、サンドペーパーをガラスビーカー内壁に貼りつけて登壁抑制効果を比較した。各容器には人工飼料と幼虫(7、10、20 日齢)を20匹ずつ入れ、3日後に容器内の幼虫残存率(%)を求めた。実験② つぎに、表面に円錐台の突起を持つテープ状の構造物(以下、突起構造物)を考案した。突起の配置間隔を3種類(0.5、1.5、2.5 ㎜)に設計し、突起なし(コントロール)の構造物と共に3Dプリンターで製作して実験①と同様に比較した。その結果、突起構造物を処理した容器ではコントロールよりも平均残存率が有意に高く、特に10と20日齢の場合に突起あり容器の幼虫残存率は80%以上であった。以上の結果から、適切な配置間隔の突起構造物を飼育容器に適用することで、高い逃亡抑制効果が得られることが明らかになった。
〇柴田智文(東京大農学生命)・上原拓也(農研機構)・霜田政美 (東大・農学生命)
タバコカスミカメはアザミウマなどの微小害虫を捕食する天敵昆虫の一種である。本種は他の天敵昆虫よりも捕食能力が高く、生物農薬としての幅広い利用が大いに期待されている。しかし、本種は雑食性であり、一部の植物においては植物体のみで繁殖できる植食性の性質と、害虫を捕食する肉食性を持つ。このため、生息密度が高くなると農作物をも加害してしまう問題点もある。本研究では、雑食性のような本種に特徴的な遺伝子探索を目的として、昨年度よりもより高精度での全ゲノム解析を行うと共に、機能性遺伝子の中でも味覚遺伝子に着目して遺伝子探索を行った。
全ゲノム解析ではnanoporeシーケンスのカバレッジを厚くすると共に、Hi-C解析を行い、EnTAPとGeMoMaを用いた機能アノテーションも行った。遺伝子探索では食性の異なる近縁種4種との味覚遺伝子の相同性を比較した。
これらの結果、全ゲノム解析においては連続性が遥かに改善し、機能アノテーションも付随したゲノム 配列を得ることができた。また、遺伝子探索では相同性に基づいた系統樹にて、植食性や肉食性でクレードを形成している遺伝子が見られた。以上の結果は、本種の更なる有用性遺伝子の探索や、問題点の解決に大きく寄与すると考えられる。
アメリカミズアブ飼育における連続的環境センシングシステムの開発
〇西岡蒼吾・霜田政美 (東大・農学生命)
アメリカミズアブHermetia illucens (以下、ミズアブ)は、昨今、有機廃棄物処理の観点から注目を集めている。しかし、安定した大量飼育および自動飼育のための知見や技術の供給は十分ではない。本研究ではミズアブの自動飼育に向けたセンシングシステムの構築を目的として、マイコンにRaspberryPi4を用い、飼育室の環境センサー(温度、湿度、照度)および培地の物理化学センサー(温度、水分率、pH)を稼働させ、遠隔でのデータ収集を可能にするモニタリングシステムを構築した。500mlビーカーでの小規模飼育において、環境センサーおよび物理化学センサー(水分率を除く)が安定的に機能することを確認し、幼虫を入れたビーカー(実験区)と幼虫を入れないビーカー(対照区)で連続計測を試みた。その結果、対照区では温度、pHともに大きな変動がみられなかったのに対し、実験区ではpHが塩基性にシフトし、同時に温度上昇が観測された。以上の結果から、本センシングシステムを用いることでリアルタイムに飼育/培地環境情報の取得が可能であり、将来、給餌ロボットと連結することで、無人自動飼育システムの開発が可能であることが示された。
Growth of black soldier fly larvae is unaffected by suppression of gut microbiome
〇Rina Fukunaga・Masami Shimoda (Agri Life Sci, Univ Tokyo)
Black soldier fly (BSF), Hermetia illucens, is the basis of a new method for organic waste recycling. BSF larva’s strong digestive capacity is thought to derive from its gut microbiome (GM). To examine the potential symbiotic relationship between BSF and its GM, we compared the growth of germ-free larvae with that of larvae with germs. Germ-free larvae were prepared by sterilizing eggs with 1% sodium hypochlorite solution and feeding the hatched larvae autoclaved artificial diet. We also prepared germ-free larvae using antibiotics. For the control ‘with-germs’ treatment, we inoculated food with a small amount of frass obtained from the debris of normal BSF rearing. Surprisingly, germ-free larvae, including those prepared using antibiotics, grew up at the same rate as the larvae with germs. The maximum weight of germ-free larvae was 0.43g, which was comparable to that of larvae reared with germs. These results indicate that BSF larvae are not dependent on GM for their normal growth and question the role of GM in BSF’s strong digestive capacity.
ネギアザミウマの視覚認知:赤ネットはどうして防除効果が高いのか?
◯德嶋 賀彰(千葉県松戸市)・德丸 晋虫・伊藤 俊(京都府農技セ)・
山口 照美・霜田 政美(東大・農学生命)
慣行の白色系防虫ネットの代わりに赤色系防虫ネット(赤ネット)を物理的防除法として圃場に展張することで,ネギ(德丸ら、2016)及びキャベツ(Ohya et al., 2022)へのネギアザミウマによる被害を軽減できることが報告されている.異なる色のネットに対する行動反応の違いは,ネギアザミウマがネットの光反射波長を視覚的に認識した結果として解釈できるはずである.では,赤ネットの防除効果の背後で,ネギアザミウマは一体どのような視覚情報処理を行なっているのだろうか?これを推測するために,赤ネットによる防除効果を視細胞分光感度にもとづき統計的にモデル化して分析した.その結果,緑型視細胞が強く刺激される赤色系のネット では防除効果が向上し,一方で青型視細胞が強く刺激される白色系のネット では防除効果が低下することが示唆された.このことは,本種の脳内高次ニューロンにおいて緑型視細胞と青型視細胞の各信号を差分処理していることを意味しており,本モデルを適用することで防虫ネット素材を最適化できる可能性がある.
コーヒー抽出かすを利用したアメリカミズアブ幼虫大量飼育法の開発
〇藤田弥佳1・劉 家銘1・成 耆鉉2・松井正人3・小林徹也1・霜田政美4・安田哲也1
1.農研機構 2. 神奈川県立保健福祉大学 3.清水建設株式会社 4. 東大・農学生命
アメリカミズアブHermetia illucens は食性が広く、生ゴミ、家畜糞なども摂食できる腐食性昆虫である。幼虫は栄養価に優れ、今後、畜産飼料や水産飼料などへの活用が期待されている。ミズアブの産業利用のための低コスト・省力で収量の高いミズアブ幼虫大量飼育法を開発するため、コーヒー抽出後のかすの利用に着目した。コーヒー抽出かすは現状ではほぼ産業廃棄物として扱われており、リサイクルの用途が求められている。
まずコーヒー抽出かす単独でミズアブ幼虫を飼育したところ、摂食はするものの成長が遅かった。次に、入手が容易で品質が一定な市販のパン粉をコーヒー抽出かすに混合して加水した飼料を用い、ミズアブ幼虫を終齢まで飼育した。コーヒー抽出かす:パン粉の混合重量比1:1の飼料では幼虫は十分に発育するものの、飼育期間後半に飼料の粘性が高くなり幼虫を回収しにくかった。3:1では幼虫は順調に発育し回収も問題なかった。一方、9:1までパン粉を減らすと幼虫は大きく育たなかった。コーヒー抽出かすを他の食品残渣と混合することで、ミズアブ幼虫の生産に活用できることが明らかになった。
アミノ酸トランスポーターの阻害によるアメリカミズアブ幼虫のアミノ酸含量の増加
◯劉家銘・上原拓也(農研機構)・霜田政美(東大・農学生命)
アメリカミズアブHermetia illucens (以下、ミズアブ)の幼虫はタンパク質を多く含むため、養殖魚飼料の代替タンパク質源として注目されており、養殖魚の要求に応じてアミノ酸量を増加させることが望ましい。本研究では、ミズアブ幼虫のアミノ酸排出を抑制することにより、体内にアミノ酸を過剰蓄積させることを試みた。まず、中腸(MG)とマルピーギ管(MT)のアミノ酸輸送に関わるアミノ酸トランスポーター(NATs)遺伝子を解析した。次に、MG-NATとMT-NATの輸送機能を阻害するため、幼虫体腔に二本鎖RNA(dsNATs)を注入した。結果、MG-NATを阻害した幼虫はコントロールと比べMG-NAT発現量は29%に、体重は22%に減少した。一方、MT-NATを阻害した幼虫のMT-NAT発現量は38%に、体重は45%に減少した。MG-NAT阻害幼虫のアミノ酸総量はコントロールと比べて42%減少した一方で、MT-NAT阻害幼虫のアミノ酸総量は35%増加し、アミノ酸の種類によって挙動が異なっていた。以上から、NATsを阻害してアミノ酸排出を抑制することで、ミズアブ幼虫のアミノ酸総量や動物の要求に応じたアミノ酸組成の調整が可能であると結論した。
〇伊藤健司¹・霜田政美²・杉山満隆3・小原慎司¹・手塚俊行¹ (株式会社アグリ総研¹・
東大・農学生命²・日栄インテック株式会社3)
近年、ナミヒメハナカメムシ、タバコカスミカメ、ブランコヤドリバエ、ヒメカメノコテントウなどの多くの天敵昆虫で紫色光選好性が発見されており、この選好性を利用することで害虫防除に寄与できると考えられている。そこで演者らは作物への天敵の誘導を目的とした照度センサー機能付き紫色LEDライトを開発し、茨城県取手市の鉢植えナスを多数設置したビニールハウス内でオオムギバンカーに定着させたヒメカメノコテントウを対象に効果の確認を行った。その結果、紫LEDライト非設置区では、オオムギバンカー周辺に長期間留まっていたのに対して、設置区では試験開始の翌日から紫LEDライト側への移動が確認された。
〇村田篤志1・手塚俊行2・杉山満隆3・霜田政美4(茨城県立農業大学校・園芸部1、株式会社アグリ総研2、日栄インテック株式会社3、東大・農学生4)
波長選好性の研究から、ヒメハナカメムシ・ブランコヤドリバエ・タバコカスミカメなどの天敵昆虫が405nm付近の紫色光に強く誘引されることが見出されている。本研究では、重要な天敵昆虫であるテントウムシ数種について波長選好性を調査し、飛ばないナミテントウ(商品名トバテン)に紫色光選好性を発見した。トバテンは飛べないにも関わらず、時間とともに防除すべき作物から逃走することがある。そこで、紫色LEDライトを用いることで作物への定着が強化できるかどうかを検証した。慣行農法に則ってナスを定植したビニールハウスを2棟準備した(ただし殺虫剤は不使用)。天敵温存植物として株間にスカエボラとアリッサムを植えた。ナス株に1頭ずつトバテンを放飼して、ハウス奥からポータブル紫色LEDライト(日栄インテック製)を日没後に点灯した。その結果、①無点灯(コントロール)では放飼9日目までにトバテンが全て逃亡したのに対し、②点灯区では餌のアブラムシがいないにも関わらず、16日目以降もトバテンがナス株上に残った。この結果から、紫色LEDにはトバテンの定着増強効果があり、トバテンと紫色LEDを併用することで、生物農薬で重視される害虫発生前に天敵が存在するという状況を作れる可能性が示された。
第67回 日本応用動物昆虫学会大会 小集会(令和5年3月15日、摂南大学)
世話人:安田哲也・劉家銘・霜田政美
W12応用昆虫学の新しいチャレンジ: 腐食性昆虫を使った資源循環
W12-01 ◯藤谷 泰裕1(地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総 合研究所) 昆虫の特性を活用した食 品・飼料利用の展望
W12-02 ◯三浦 猛1・井戸 篤史1・三浦 智恵美2 (1. 愛媛大学農学研究 科、2. 広島工業大学環境 学部) 昆虫の水産養殖への利用: 飼料原料としての
W12-03 ◯ Shih ChengJen1・Lee Yong-Yueh2 (1. National Taiwan Univ.、2. Stonbo Creative Co.) Design and Development of Automated Rearing System for Black Soldier Fly
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